午前7時に起床、そのまま近くの神社までランニング(往復約3キロ、15分〜20分)。神社内で、縄跳び(約10分〜15分)、膝の屈伸運動(初め10回、慣れてくると15回位)、握力の鍛錬(握力強化ナックルバーベルを使用)を50回〜70回位。
さらに毎日2時間、違ったレーンで投球練習をする。試験日が近づくと、試験会場の両センターで1日おきに10ゲーム練習して、レーンに慣れるようにした。
まず縄跳びは、最初両足跳びをやり、次にアプローチのタイミングとバランスをとるために片足で、口の中で「1、2、3、4」と言いながら続ける。だいたい10分から15分、回数にして100回位。これはアプローチで大切な足・腰の強化鍛錬にもなる。左足を中心にする。
膝の屈伸運動―よくウサギ跳びをやる人もいるが―は、やはり足腰の鍛錬と同時に、足首、特にアキレス腱の強化に大切な運動である。
握力の鍛錬―これは特に女性の場合必要である。プロをめざす女性であれば最低14ポンド(約6.3キログラム)から15ポンド(6.8キロ)の重さのボールを投球するわけである。しかもそれを、3本の指で投球するわけであるから、かなりの腕力と指の力、握力が必要となてくっる。
彼女の場合、フィンガーを強くするために握力強力ナックル、鉄アレイ・ダンベルを使った。ナックルは2種類あって輪になっている方は手の握力を強くし、棒状のものはフィンガーを強化する目的で使われる。
こうしたトレーニングは断続的ではだめで、苦しくても続けなければ効果は上がらない。
彼女の告白によると、最初の1週間位は身体のふしぶしが痛くなって、何度やめようと思ったか知れないそうだ。非常にキツかったらしい。なにしろ彼女は、中学・高校を通して運動らしい運動をやったことがなかったのだから、それも無理のないことである。
トレーニング中は、睡眠時間も6時間くらいにした。トレーニングを始めた頃は、まだ家族に内緒だった。両親は「恵美子はまた何をやり始めたんだろう?」とキョトンとしていたらしい。
苦しい1週間が過ぎて、トレーニングを続ける自信も出てきて、身体のコンディションも良くなってきたので、やっと家族に「プロテストを受ける」と告白した
最初家族は反対だったが、熱心な彼女の努力を認め、それから4週間、家族あげて協力してくれた。
食事には肉と野菜をふんだんに使ってくれ、家事手伝いもプロテストが終わるまでしなくてもよいことを認めてくれたのである。
実際のボウリングの練習は、徹底した基本の繰り返しをやった。トレーニングを始める前、家の近くにあるアサガヤボウルでとったアベレージは、12ゲームで157アベレージである。プロテストの基準は36ゲーム、180アベだから、彼女にとっては常識的に考えて不可能なことである。
彼女は毎日2時間にわたるボウリングの練習をどのようにやったのか。彼女がとった方法は、賢明にも徹底した基本の復習であった。毎日毎日、レーンを変えては、例えば2番スパット(10枚目)を通す練習、しかもどこから投球すればいちばん10枚目を通しやすいか、というような基本の練習を続けたのである。
さらにスイングを固定するために、右肩が振れないように何回も何回もシャドウ・ボウリング(ボールを持たないで練習する方法)を繰り返したり、スイングと助走のタイミングを取るためにアプローチの基本を復習した。
こうして1ヶ月にわたる苦しいトレーニングの末、彼女は見事な成果をあげた
プロテスト数日前にとったスコアは、15ゲームで185アベレージという立派なものであった。
苦しい「自分との闘い」に、ついに彼女は勝利をおさめ、自分でも信じられないくらいの好成績で念願のプロテストに合格し、晴の女子プロボウラーの栄誉をかちとったのである。
並木恵美子は、こういった。
「何かをやるためには本当に忍耐力が必要ですね。私は20歳だから、トレーニングをやっていても遊びたいと思った。だけど皆のように遊んでは何もプラスにはならないと思ったんです。若いから、そういった誘惑をおさえてやれば、何かが摑める―そういった、何か人生訓みたいなものを学びました。」
この言葉を、これからプロテストを受験しようとする全女性にお贈りしたい。
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